放射MTGメモ(2015/11/30)

参加者

  • はしもとじょーじ, 高橋康人, 大西将徳

系外惑星放射計算プログラムの開発 (大西)

  • 水蒸気混合大気の line-by-line 放射計算で確認された低温成層圏・高温成層圏の物理を理解するために, Toy Model, 2 Bands Model による圏界面の加熱率の考察を行った.
    • Toy Model
      • line-by-line 放射計算に用いている放射伝達方程式 (Toon et al., 1989) から以下の3つの近似で導かれる.
        • 散乱なし
        • 圏界面の定圧モル比熱, 混合大気の分子量は, 窒素大気と近似
        • 圏界面に下層から入射するフラックスは, 圏界面より下層の光学的厚さ 1/beta (beta: diffusivity factor = 2) の層からやってくるフラックで近似.
      • 対流圏は飽和.
      • 成層圏は等温.
      • 成層圏の水蒸気体積混合比は圏界面に一致.
      • 吸収断面積は line-by-line 放射計算の計算結果に基づいて与える.
      • 圏界面に入射する太陽光放射による直達光により, 圏界面での太陽光による加熱率を計算.
      • 圏界面に入射する上下からの惑星放射と, 圏界面が射出する惑星放射により圏界面での惑星放射による正味冷却率を計算.
    • Toy Model の結果と考察
      • 地表面温度が異なると(背景大気量は同じ), 惑星放射による正味冷却率の極大が現れる圏界面温度が異なる.
      • 地表面温度が異なっても(背景大気量は同じ), 太陽光による加熱の振る舞いは似ている.
      • 上記 2 点より, 高温成層圏の存在を分けているのは, 冷却率の極大がどの圏界面温度に現れるかに関係していそうである.
      • 惑星放射による正味冷却率の内訳を見ると, 成層圏からの下向き放射による加熱率が, 惑星放射による冷却率の極大と関連が深い.
        • 背景大気量が同じ場合, 地表面温度が高いほど, 低い圏界面温度で加熱率が立ち上がる.
        • 地表面温度が高いほど圏界面高度は高くなる (圧力は低くなる) ため, 地表面温度が高いほど吸収線幅は細くなる.
        • つまり, 地表面温度が高いほど, 吸収断面積の強い波数帯と弱い波数帯の吸収断面積のコントラストが大きくなる.
        • 地表面温度が高いほど吸収断面積のコントラストが大きくなることが, 成層圏からの放射による加熱率が立ち上がる圏界面温度を決めているのではないか.
    • 2 Bands Model
      • 成層圏からの下向き放射による加熱率の地表面温度依存性を考察することを目的としたモデル.
      • 吸収断面積の強い波数帯と弱い波数帯の吸収断面積のコントラストの大小によって, 加熱率の立ち上がる圏界面温度がどのように変わるか考察する.
      • 強吸収帯, 弱吸収帯の吸収係数 k1, k2 と波数領域に対する割合 f1, f2 を用いて sigma ki*fi*(1-exp[-ki*Nst]) を計算 (Nst: 成層圏の吸収体の分子数).
      • 但し, sigma ki * fi = 一定.
    • 2 Bands Model の結果
      • 吸収断面積のコントラストが大きいほど, 低い成層圏温度で加熱率の立ち上がりが生じる.
      • つまり, 地表面温度が高いほど (背景大気量が同じ場合) 低い成層圏温度で加熱率の立ち上がりが生じる.
    • 議論, コメントなど.
      • Toy Model の加熱率の独立変数は, 地表面温度, 圏界面温度, 背景大気量とするほうが後の議論と整合的 (圏界面圧力, 圏界面温度, 背景大気量ではなく).
      • line-by-line 放射計算の結果と, ToyModel の結果が, 圏界面温度が低い場合にずれるのはなぜか.
        • 太陽光による加熱率の違いは, 地表で跳ね返ってくるものが無視されているからだろう.
        • 惑星放射による冷却率の違いは, 散乱の有無では説明できないだろう.
      • 高温成層圏の有無は, 惑星放射による冷却率の極大の位置よりも, 圏界面温度が高温の場合の加熱冷却率の傾き, 漸近する値が重要なのではないか.
        • 太陽直達光による加熱率は, 圏界面温度が高くなると 0 に漸近する.
        • 惑星放射による正味冷却率は, 圏界面温度が高くなったときに, ある負の値に漸近するはず.
        • 灰色モデル, 2 Bands Model で, 加熱冷却率の圏界面温度依存性を考察するのがよい.
    • To Do
      • 灰色モデル, 2 Bands Model により加熱冷却率の圏界面温度依存性を考察し, 高温成層圏の有無の物理を明らかにする.
  • mtg 資料

木星大気の放射計算 (高橋康)

  • Letter の執筆
    • イントロの部分を書き直している.

次回の日程

  • 12/7 (月) 9:00-