私が最近行っている研究は、衝突クレーター実験である。

でも、よく友人に「クレーターなんか研究してて、おもしろい?」とか「クレーターってただの穴ぼこちゃうの?(間違っちゃいないが)」「なんか地味・・」なんていわれます。

たかがクレーター、されどクレーター。実はそれなりに奥が深いんですよ。
以下私が現在とりくんでいる「クレーターに関する研究」について簡単に紹介します。


(1)衝突クレーター素過程の研究

太陽系固体天体における衝突現象の研究:  固体太陽系天体地表に卓越する地形である衝突クレータの解析から、衝突天体の情報(サイズ分布、軌道及びそれらの時間的進化等)が推定される。また、クレータ年代学を基に地域別の形成年代が、またクレータの形態変化の比較から衝突時の環境が推定され、太陽系天体の地表面進化・表面に関連する内部進化がどのようなものであったかを探ることが可能となる。

衝突クレーターに対するスケーリング則:  ところで、これらの研究を行う上では、クレータの大きさ・形状に対するスケーリング則が基礎方程式となる。 従来の天体クレータに関する研究では、現象論的または定性的研究が主であった為、衝突クレータ実験のデータを統計的に解釈し、スケーリング則の定式化が行われてきた。その為、現在よく用いられるスケーリング則には未だ大きな不定性があり、またその原因についてはよく分かっていない。

衝突素過程のその場観察:  従来の天体クレータに関する研究では、クレータ形成の衝突現象そのものが複雑であることから、衝突現象をブラックボックス的に捉え、実験室で得られるデータを統計的に解釈するという方法が用いられてきた。また、実験後に真空チャンバーからターゲットを回収し、クレータの最終形状を解析するという方法が主であった。
しかし、スケーリング則の不定性問題を解決するには、クレーター形成過程についてその場観測を行い、その過程を物理的・定量的に解釈することが重要となる。これまでの研究により、クレータ形成過程では(1)弾丸衝突によるターゲットの圧縮段階と(2)物質の流動段階(掘削段階)の二つの過程により、クレータが形成されることが分かっている。そこで私が現在行っている研究では、クレータ形成過程における圧縮段階と掘削段階をその場観測し、クレータ形成メカニズムを物理的に調べる手法を開発し、確立することを目的としている。

この研究の結果が与えるインパクト:  本研究の結果は、従来のスケーリング則を大きく書き換える可能性がある。その場合、従来の固体天体の進化・内部構造の解釈に大きな影響を与える可能性がある。

他の研究テーマ:(工事中)

  • 一時クレーター形成と崩壊過程の研究
  • 放出速度分布の研究
  • 衝突クレーターにおける掘削流と放出堆積物の総量に関する研究


    (2)衝突実験クレーターコレクション!
    031202-4:天体クレーターか実験室クレーターか区別つきます? 030701-6:堆積物をよく見るとコブコブがありますね。 031122-2:クレーター壁面の一部が崩壊しています。
    030707-3b:うーん、マニアにはたまらない一枚です。 030707-3a:見事なRay構造が見られます。 030707-4:崩壊過程の複雑さがこの不思議な形状を生み出してます。
    30-220-v223:斜め衝突の場合です。 030707-1:クレーターリム。なんともいえない艶めかしさ(?) 030221-10:いかにも実験室って感じ(後ろのノートが)。