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補正過程

図 2: 1D の不連続面の伝播と antidiffusion の影響 (Boris and Book(1973),図2を基に作成)
\begin{figure}\begin{center}
\Depsf[80mm][]{ps-fig/fig2.ps}
\end{center} \end{figure}

(5)式から明らかなように SHASTA には速度に依存した拡散が 含まれている. $u=0$ の場合にも

\begin{displaymath}
\rho _{i}^{n+1} = \rho _{i}^{n}
+ \frac{1}{8}(\rho _{i+1}^{n}-2\rho _{i}^{n}
+\rho _{i-1}^{n}),
\end{displaymath} (6')

となって拡散が残ってしまう. これを除いた修正解 $\overline{\rho }_
{i}^{n+1}$ を求めるために, (6)式を陽解法で逆に解く.

\begin{displaymath}
\overline{\rho }_{i}^{n+1} = \rho _{i}^{n+1}
- \frac{1}{8}(\rho _{i+1}^{n+1}-2\rho _{i}^{n+1}
+\rho _{i-1}^{n+1}),
\end{displaymath} (7')

(7)式右辺第二項を ``antidiffusion'' と呼ぶ. ([*])は形式的に移流形にすることができる. すなわち,

$\displaystyle \overline{\rho }_{i}^{n+1}$ $\textstyle =$ $\displaystyle \rho _{i}^{n+1} -
(f_{i+\frac{1}{2}} - f_{i-\frac{1}{2}}),$ (8')
$\displaystyle f_{i\pm \frac{1}{2}}$ $\textstyle \equiv$ $\displaystyle \pm \frac{1}{8}(\rho _{i\pm
1}^{n+1}-\rho _{i}^{n+1}),$ (9')

となる. $f_{i\pm \frac{1}{2}}$ は antidiffusive フラックス と呼ぶ.

この antidiffusion または antidiffusive フラックスを加えれば数値拡散 を除去することができるので,いつでも正しい解が得られるかというと実 はそうではない. 例えばFig.2のような不連続面が一定の速度 で移流されるような場合を考えてみよう. ある時刻で図のように正しい解 が得られているとする. これに antidiffusion を加えると図に示した矢 印のように $i$ での値は増加し $i+1$ の値は減少してしまう. よって新 たに極値を作り出すことになる. とくに非負の物理量を計算している場 合は $i+1$ に負の値が生じてしまう. 明らかにこれは非物理的な解であ る.

antidiffusion を加えるときは以上のような非物理的な解を生じないよう に注意しなければならない. すなわち,

という条件を満たすように $f_{i\pm \frac{1}{2}}$ を加えなければなら ない. そこで以下のような補正フラックス( corrected flux ) $f^{c}_{i\pm
\frac{1}{2}}$ を新たに定義し, これを(8)式の $f_{i\pm \frac{1}{2}}$ と置き換えて用いることにする.


\begin{displaymath}
f^{c}_{i+\frac{1}{2}} \equiv S_{i+\frac{1}{2}} \mbox{max}
...
...{1}{2}}\vert, \; S_{i+\frac{1}{2}}\Delta _{i+\frac{3}{2}})\},
\end{displaymath} (10')


\begin{displaymath}
\Delta _{i+\frac{1}{2}} = \rho _{i+1}^{n+1}-\rho _{i}^{n+1},
\end{displaymath} (11')


\begin{displaymath}
S = \left\{
\begin{array}{lcl}
+1 & \mbox{if} & f_{i+\fr...
...
-1 & \mbox{if} & f_{i+\frac{1}{2}} < 0
\end{array} \right.
\end{displaymath} (12')

図 3: 変数の取り得る空間配置と補正流束の作用範囲 (Book et al.(1973),図6を基に作成)
\begin{figure}\begin{center}
\Depsf[120mm][]{ps-fig/fig3.ps}
\end{center} \end{figure}

この補正フラックスはどのような場合に作用するよう定義されたのか具体 的な例を挙げて調べてみる. Fig.3には $f_{i+\frac{1}{2}}>0$ のときに取り得る配置を示してある. (a) のよう な場合 $f^{c}_{i\pm
\frac{1}{2}}$ は図に示した矢印の範囲まで補正し うる大きさをとることができる. それ以上の大きさになると新たに極値が 生じてしまう. これに対し (b)$\sim $(d) の場合 $f^{c}_{i\pm
\frac{1}{2}}$ は 0 にしなくてはならない. そうしないと既に存在して いる極大(極小)がさらに成長してしまい, 先に述べたような非物理的な解 が生じるようになってしまうからである. (10)$\sim $(12)式で与えた補正フラックスはFig.3(a)のよ うな場合に極値を生じないよう作用するように巧妙に定義したものなので ある.


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odakker 平成18年2月13日