■ 火星: 砂の惑星の大気
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図8:
ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影された 1997 年 3 月 10 日の火星
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ハッブル宇宙望遠鏡写真集 より取得].
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図9:
火星の平均東西風の分布. 上から順に北半球の秋, 冬, 春.
マーズグローバルサーベイヤー (MGS) によって観測された気温から計算.
中高緯度では西風が吹いていると考えられている.
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NASA 惑星画像ホームページより取得].
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図10:
マーズグローバルサーベイヤーによって撮影された,
秋 (Ls=163) の北半球極付近似現れ他渦野時間変化.
撮像範囲は 64-82N, 286-40W.
大気中の渦的な流れにのってダストが輸送される様子がわかる
[
MGS/MOC ホームページより取得].
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火星は地表面を岩石と砂に覆われた惑星であり, 地表に液体の水は存在しない.
大気量が少ないため温室効果は地球に比べ弱い.
大気の温度圧力領域は地球大気の成層圏のそれに相当する.
大気の循環 (風速分布) を直接観測した例はない.
しかし気温, 大気中のダスト(砂), 水蒸気量の分布から,
間接的に大気循環の様子を知ることができる.
火星大気の特徴は以下の 4 つである.
- 水はほとんど存在しない:
大気温度が低いため, 大気中に存在する水蒸気量を全て集めても
全球平均で数 μm 程度の厚さにしかならない.
このため水蒸気の凝結熱が大気循環に与える影響はほとんど無視できる.
- 大気が「凍る」:
冬極では大気の主成分である CO2 が凝結し,
極冠が形成される (図8 の北極付近を参照).
地球で氷を形成する水は大気中の 1 % 前後の成分である.
- 大気中にダスト (砂) がある:
地表から風によって巻き上げられたダストが
太陽放射を吸収することにより大気を加熱する.
火山灰等の地球大気エアロゾルは一般に大気を冷却する方向に働くこととは対照的である.
数年に 1 度の間隔で「大ダストストーム」と呼ばれる全球を覆う砂嵐が起こる.
このとき可視光で火星地表面を直接見ることはできない.
- 中高緯度に西風が吹く:
火星の自転速度は地球とほぼ同じなので,
火星大気の循環は自転する惑星大気循環の理論で理解できると考えられている.
探査衛星から観測された気温の分布から東西風の分布を計算すると,
春秋の中高緯度では地球大気と同じように西風が吹く.
ただし夏冬の東西風の分布は,
地球大気の対流圏よりも成層圏のそれに似ている.
中高緯度には渦的な大気の流れが観察される.
「特徴 3」 は「特徴 1」と関係している.
もし大気中に水が豊富に存在していたとすると,
大気中のダストは水蒸気の凝結核となり, 最終的には降水となって地表に落下する.
この場合,
全球が砂に覆われる「大ダストストーム」はほとんど起こらないだろうと想像される.
- 火星大気循環の詳細は, 読書ノート
火星大気の力学 を参照されたい.
- 火星探査/観測関連
- 惑星画像
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