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凍結状態の3 次元計算
石渡正樹(北大・地球環境)
momoko@ees.hokudai.ac.jp
2004 年 3 月 6 日
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タイトル
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EBM の結果
- 前回の復習。3次元で解くとこの解の形は変わるのか?
- ポイントは…
- Large ice cap instability
- Small ice cap instability
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問題意識
- 解の構造
- EBM (一次元) と GCM (三次元) の比較
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GCM を用いた Snowball Earth の研究例
- 始め: Weathearld and Manabe(1975)
- そもそもは温暖化に興味
- 結果: 凍結状態は凍結したまま
- 「立派な」GCM を用いた計算例
- 立派なモデルの例: 1層の海洋を組み込んだモデル
- 海洋の影響…主に熱輸送.
- 鉛直方向を考慮すると、対流によって凍結が妨げられる?
- 海洋を多層にすると全球凍結が起こらなかったり.
- モデルによって, 結果が異なる.
- 立派なモデルは複雑=結果についての解析が不可能
- 「地形はどうしてるんでしょう. よくわかりません by 石渡」
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モデル設定
- 陸はない
- 結氷温度
- 地表面温度が 263 K 以下になったら結氷
- 氷のアルベドは 0.5
- 実際の地球より小さい
- 放射吸収係数が小さいので、それとバランスさせるように来めた.
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実験設定
- 左図で太陽定数を変化させる.
- 初期値は, 等温大気, 全球凍結, 部分凍結 etc.
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EBM と GCM との比較
- 初期条件が異なる場合の解が同時に描かれていることに注意
- 左図: S=1300 は S=1000 の間違い.
- 基本的なパターンは変わらない.
- EBM の large polar cap instability の部分に解がない
- large polar cap の範囲が広い
- small polar cap でも安定になれる
- 安定な無極冠状態はない
- 全球凍結は1700 まで。それ以上だと暴走状態になる
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低緯度まで凍った状態になるか?
答え: ならない.
- 全球凍結解は安定.
- 部分凍結解は中高緯度まで氷が減衰
- EBM での不安定解は, 時間発展である GCM では現れないのでは.
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太陽定数を減少させていくと
- 低緯度まで氷が広がった状態になる
- S1280 あたりで, ハドレー循環の構造が変化する(次のスライド).
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低緯度まで氷が広がった状態
- 降水の位置が赤道では無くて, 氷境界の上ぐらい
- ハドレー循環の向きは逆転,
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低緯度まで氷が広がった状態での降水
アニメーションはこちら
- 赤道ではなく、氷境界付近での降雨が見られる
- 氷境界での南北温度差による傾圧不安定擾乱!?
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small ice-cap が許されるのはなぜか
- 右パネル:
- 緑: 現在の地球
- 青: 全球凍結状態
- 赤: 部分凍結状態で一番氷が少ない状態
- 高緯度部分凍結解と氷無しの状態
- 氷線緯度は振動している.
- 低緯度側の方が振幅している -> 振動解と思った方が良い!?
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「ほぼ全球凍結状」を初期値にした場合
- 全球凍結解を初期値にすると
- S=1710 W/m2 までは全球凍結状態,
- S=1720 W/m2 では暴走温室状態
- 赤道域が少し開いている場合を初期値にする
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「ほぼ全球凍結状」からの遷移
アニメーションはこちら
- 500日までの計算結果. あっという間に暴走
- 全球凍結解は不安定なのかもしれない
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まとめ: 太陽定数と氷境界緯度の関係
- 3次元計算では…
- 赤分岐から太陽定数を下げていくときに緑分岐に落ちることも可能.
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余談
- 図の進化 -> 計算時間を増やすと安定解が不安定化したりして.
- 計算時間は最初のうちは1万日に満たなかった. 最新版では6万日.
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- 結局、地球や金星が暴走する条件は?
- 暴走の条件は良くわからない
- 雲の立ち方がかわるとアルベドが変わるはず
- 全球凍結状態の条件は良くわからない
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- 常識を身につけるのは大変。
- でも世の中、常識が身についていない人も多いからまぁいいか
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参考文献
- Baum, S. K., and T. J. Crowley, 2001:
GCM response to Late Precambrian (~590 Ma) ice-covered continents.
Geophys. Res. Lett., 28, 583-586.
- Budyko, M. I., 1969:
The effect of solar radiation variations on the climate of the Earth.
Tellus, 21, 611-619.
- Manabe, S., J. Smagorinsky, and R. F. Strickler, 1965:
Simulated climatology of a general circulation model with a
hydrologic cycle.
Mon. Weather Rev., 93, 769-798.
- Mellor, G. L., and T. Yamada, 1974:
A hierarchy of turbulence closure models for planetary boundary layers.
J. Atmos. Sci.,, 31, 1791-1806.
- Wetherald, R. T., and S. Manabe, 1975:
The effects of changing the solar constant on the climate of a
general circulation model.
J. Atmos. Sci., 32, 2044-2059.
佐々木洋平, 千秋博紀, 小高正嗣(2004-04-02)© 森羅万象学校企画グループ
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