雲の寿命 (CloudLifeTime) を変化させた時の放射 (OLR, OSR) の変化を調べた.
また, 移流項を含めた場合と含めていない場合の両方の計算を行った.
実験背景や dcpam における雲水量の決定方法についてはこちらのドキュメント (pdf 形式) (tex 形式)にまとめている.
下記の 2 台で計算した. コンパイラ, 依存するライブラリは同じ (同じバージョン) である.
- CPU : Intel(R) Core(TM)2 Quad CPU Q9550 @ 2.83GHz
- OS : GNU Debian Linux 5.0 (lenny)
- uname -a : Linux joho09-itpass 2.6.26-2-amd64 #1 SMP Thu Nov 25 04:30:55 UTC 2010 x86_64 GNU/Linux
- CPU : Intel(R) Core(TM) i7 CPU 860 @ 2.80GHz
- OS : GNU Debian Linux 6.0 (sueeze)
- uname -a : Linux joho12-itpass 2.6.32-5-amd64 #1 SMP Mon Mar 7 21:35:22 UTC 2011 x86_64 GNU/Linux
- netCDF (3.6.2)
- gtool5 (20101228-1)
- ISPACK (0.93)
- spmodel (0.6.1)
- ソースファイル
- NAMELIST ファイル
- 空間解像度 : T21L22
- 経度格子点数 : 64 (格子間隔 5.6 度)
- 緯度格子点数 : 32
- 鉛直層数 : 22
- タイムステップ : 24 分
- 積分時間 : 20 年
- 初期値
- 温度場 : 280 K + 小擾乱
- 地表面気圧 : 10^5 Pa
- 東西風速 : 0 m/s
- 惑星半径 : 6371 km
- 重力加速度 : 9.8 m/s
- OLR
- 雲の寿命が長く, したがって雲の光学的厚さが大きい場合, より高高度で光学的厚さが 1 になるため OLR は小さくなる
- より高高度にある大気による放射が "見える"
- その大気の温度は惑星表面よりも低い
- OSR
- 雲の寿命が長く, したがって雲の光学的厚さが大きい場合, 入射短波放射がより反射されるため OSR は小さくなる
(絵から読み取れること)
- OLR と OSR の和 (fig.3)
- 移流ありの場合
- 雲の寿命による違いは, 移流なしの場合に比べて小さい
- 差の大きさは移流なしの場合よりも大きく, 釣り合っているとは言いにくい
- 移流なしの場合
- 雲の寿命が長い程, 差が開いているが, モデルの精度の範囲だと思われる
(まとめ)
- "移流なし" の場合には OLR と OSR は釣り合っている.
- OLR と OSR の和は雲の寿命によって変化するものの, いずれの場合も値は O(1) であり, モデルの精度の範囲内で釣り合っていると言える.
- "移流あり" の場合には釣り合っていない
(全球平均した値)
- Trenberth et al. (2009) との比較 (fig.3)
- 雲の寿命が 1200 秒のとき, よく合っている
- O(1) の違いはあるが, これはモデルの精度の範囲内である
- 値がもっとも近いのは, 移流の有無ごとでは以下の場合
- 移流あり : 雲の寿命が 900 s の時
- 移流なし : 雲の寿命が 1200 s の時
- Trenberth et al. (2009) の値
- dcpam の計算結果
- 全球平均した OLR と OSR (絶対値) の平均値
- 移流あり・なし共に単調減少の傾向
- 移流ありの場合の方が移流のない場合に比べて傾きが大きく, 放射の平均値は小さい
(東西平均した緯度分布)
- NCEP 再解析データ (1988-2007 年) との比較 (fig.5, fig.6)
- OLR の東西平均分布は熱帯域 (緯度 約 -20 度から 20 度) を除いてよく合っている
- dcpam における雲の扱いに原因があるのでは?
- 熱帯域では雲の生成が活発であるため, 中高緯度に比べてモデルにおける雲の扱いがより大きく OLR へ影響すると考えられる
- OLR に比べると, OSR の東西平均分布は dcpam と NCEP で異なっている
- NCEP の OSR の全球平均値は, Trenberth et al. (2009) の値と異なっている. これが原因?
- NCEP 再解析データの 1998-2007年 における全球平均値
- OLR: 237.579271830377 W/m^2
- Trenberth et al. (2009) の値とほぼ同じ
- OSR: 225.37284248232 W/m^2
- Trenberth et al. (2009) の値から O(10) でずれている
- 今回の条件では, 移流を含めると, OLR と OSR が釣り合った上で地球と同じような値にすることはできないようだ
- ただし, 移流を考慮した場合に雲の寿命に対して OLR - OSR の値が依存しなければいけない理由はないかもしれない
(課題)
- 移流を含めると上手くいかない理由は?
- 移流の有無に対する OLR, OSR の応答が異なる (OLR に比べて, OSR は移流の有無に依存しない) 理由
- 短波と長波に対する光学的厚さが違う?
- OLR にとっては "濃い大気" でも, OSR にとっては "薄い大気" なのかもしれない, ということ
- これを調べるには少し手間がかかる
- (済) OSR を決める上で, 雲による短波の散乱・吸収は他の過程 (大気分子による散乱・吸収, 地球表面による反射) に比べて支配的ではないのだろうか?
- 雲の寿命を 0 秒にした場合, OSR が増加したことから, この可能性は低そう
- (済) 雲粒の粒径に対する依存性
雲の寿命(秒) 0.0d0 900.0d0 1000.0d0 1200.0d0 1500.0d0
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移流あり OLR 212.776641165462 210.478295376942 206.339980640381 201.077835801546
OSR -243.869892053366 -241.451899555753 -237.336554371819 -232.054470441538
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
移流なし OLR 265.244929936016 243.742920577921 242.97203870534 241.788266799155 240.203197830703
OSR -283.519714079173 -246.00376207544 -243.681763422724 -239.591341218446 -234.134403827293
- fig.1 から fig.4
- 積分時間の 11 年目から 20 年目の値を全球平均した OLR, OSR
- 雲の寿命が 900, 1200, 1500 秒で移流あり/なしの場合を描画
- fig.5, 6
- 10 年平均・東西平均した OLR (fig.5), OSR (fig.6)
- 実線: 雲の寿命が 1200 秒で移流なしの場合の計算結果
- 積分時間 (20 年) の後半 10 年間分を平均
- 破線: NCEP の再解析データを平均した値 (1988 年から 2007 年の値の東西平均値)
fig.1 / 長波放射の全球平均値
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fig.2 / 短波放射の全球平均値 (縦軸 : -OSR)
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fig.3 / 長波放射と短波放射の和
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fig.4 / 長波放射と短波放射 (絶対値) の平均値, 地球の長波放射
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fig.5 / 東西平均 OLR 分布 (実線: dcpam による計算結果, 破線: NCEP 再解析データ)
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fig.6 / 東西平均 OSR 分布 (実線: dcpam による計算結果, 破線: NCEP 再解析データ)
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