[ 地球流体電脳倶楽部 / dcpam / ]
- 概要
- 実験環境
- 実験設定
- 考察
- 結果
移流を考慮した場合に放射収支が大きく変化してしまう原因を調べるために,
移流なしの計算においてスペクトル変換を用い, その計算結果を移流ありの場合の結果と比較した.
さらに, 雲水量が各鉛直層内で保存するようにプログラムを書換え, これまで暗黙に生じていた鉛直移流が
起こらないようにしたうえで, 同様の計算を行った.
- 現在の dcpam における補正方法とその問題点
- 補正方法
- 各カラムの雲水量が保存されるように, 他の格子点から雲水量を借りる
- 問題点
- あるカラムの上層で雲水量が負の値になった際に下層から雲水量を借りると, 全体としては雲水が上層へ輸送されたことになる.
すなわち, 上層の雲水量が増えたことになるだろう.
このとき, 補正前に比べてより高高度にある大気層の温度が OLR に寄与するようになるため, OLR が小さくなってしまう.
- あるカラムの負の値を補正をする際, 惑星表面から雲水の値を借りるとカラム内の総雲水量が増えたことになる.
したがって, 長波放射や短波放射に対する光学的厚さが大きくなり, OLR や OSR が小さくなってしまう可能性がある.
- ただし, 上層で雲水量が負の値になった際に, 下層では十分な雲水量があるとすれば, 惑星表面からは値雲水を借りないため,
カラム内の総雲水量は増えない.
下記の 2 台で計算した. コンパイラ, 依存するライブラリは同じ (同じバージョン) である.
- CPU : Intel(R) Core(TM)2 Quad CPU Q9550 @ 2.83GHz
- OS : GNU Debian Linux 5.0 (lenny)
- uname -a : Linux joho09-itpass 2.6.26-2-amd64 #1 SMP Thu Nov 25 04:30:55 UTC 2010 x86_64 GNU/Linux
- CPU : Intel(R) Core(TM) i7 CPU 860 @ 2.80GHz
- OS : GNU Debian Linux 6.0 (sueeze)
- uname -a : Linux joho12-itpass 2.6.32-5-amd64 #1 SMP Mon Mar 7 21:35:22 UTC 2011 x86_64 GNU/Linux
- netCDF (3.6.2)
- gtool5 (20101228-1)
- ISPACK (0.93)
- spmodel (0.6.1)
- ソースファイル
- dcpam5 ver.20110407 に変更を加えたもの [tar.gz]
- src/dynamics_hspl_vas83.F90 を編集
- dcpam5 ver.20110407 に変更を加えたもの [tar.gz]
- NAMELIST ファイル (移流なし, 雲の寿命 1200 秒)
- 空間解像度 : T21L22
- 経度格子点数 : 64 (格子間隔 5.6 度)
- 緯度格子点数 : 32
- 鉛直層数 : 22
- タイムステップ : 24 分
- 積分時間 : 20 年
- 初期値
- 温度場 : 280 K + 小擾乱
- 地表面気圧 : 10^5 Pa
- 東西風速 : 0 m/s
- 惑星半径 : 6371 km
- 重力加速度 : 9.8 m/s
- 雲の寿命 1200 秒
- 移流なし
- 下記の "移流なしの計算においてスペクトル変換を用いた場合" の結果からはそのように思える
- OSR, OLR の値が両方とも, 移流なし (雲の寿命 1200 s) の値よりも移流あり (雲の寿命 1200 s) の値に近い
- 結果
- OLR, OSR の全球平均値の大小関係が, 予想と反対
- 鉛直層内の雲水量が保存 < 各カラムの雲水量が保存 (\sim 移流なしでスペクトル変換を用いた場合 \sim 移流あり)
- 考察
- モデルの積分時間の後半 10 年間の標準偏差 (全球平均値の時系列の偏差. 下記参照) よりも, 補正方法による違いの方が大きい
- OLRA: 3.46675927880984 W m-2
- OSRA: 7.33470548710087 W m-2
- まとめ
- 負の水蒸気量の補正方法に起因する OLR や OSR の違いは, モデルの準定常状態における平均的な構造の変動幅 (標準偏差) よりも大きい
- 平均的な構造の変動には, 物理的な要因でおこる変動と計算誤差の両方が含まれている
- 物理的な要因は, 例えばロスビー波やケルビン波, 重力波. 種類は違うが, 季節変化による変動も含まれている
- したがって, 補正方法の違いは物理的に効いているようだ.
- しかし, 定性的に考え得る変化 (各カラムの雲水量が保存する方法に比べて, 鉛直層内の雲水量が保存する方法の方が OLR や OSR は大きい) とは
逆センスの変化が現れており, 今の所, なぜ補正方法によって放射の値が変わるのかは分からない.
- また, したがって, 雲の移流を計算した場合になぜ OLR や OSR が下記で示されるほど変わるのかが分からない (ギブズ現象ではなかったということ?)
- OLR が変わる理由は分かったつもりでいる (上記参照)
- OSR があまり変わらない理由が分からない
積分時間の 11 年目から 20 年目の値の全球平均値
雲水の値が負になった場合の対処 : 低高度の格子点から雲水を持ってきて値をゼロにする (各カラムの雲水量が保存)
雲の寿命 (秒) 1200.0d0
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移流なし OLR 207.018723279409
OSR -237.233472902407
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雲水の値が負になった場合の対処 : 等高度の格子点から雲水を持ってきて値をゼロにする (鉛直層内の雲水が保存)
雲の寿命 (秒) 1200.0d0
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移流なし OLR 202.069162373844
OSR -227.976531279132
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dcmodel Development Group / GFD Dennou Staff
Last Updated: 2011/08/01 (井谷 優花), Since: 2011/07/18 (井谷 優花)