大気の質量は, 水蒸気の蒸発と凝結(降水過程)によって変化する. 現在の地球大気の場合には通常この効果は無視することが できるけれども, 大気中の水蒸気量が増大した場合には 蒸発と凝結による大気質量変化を考慮する必要がある.
蒸発と凝結による大気質量変化をまじめに考慮する場合には, 各高度レベルにおいて質量変化を計算することになる. しかし, そのような取り扱いは 座標系においては 非常に繁雑になる. dcpam の蒸発・凝結による大気質量変化を計算するモジュールにおいては, 水蒸気の凝結・蒸発による大気質量の変化については, それぞれの鉛直コラムにおけるトータルの質量変化, すなわち蒸発量と凝結量の差の鉛直積分 だけを考慮し, 各時間ステップの最後で表面気圧 と比湿 を 補正するということをおこなっている.
各時間ステップにおける表面気圧 の補正量を
,
凝結と蒸発による比湿変化を とおくと
(8.1) |
地表面における蒸発フラックスを
,
をタイムステップとすると,
蒸発による最下層の比湿変化
は
(8.2) |
(8.3) |
(8.4) |
よって,
(8.5) |
上のように, 表面気圧 を補正したならば 各鉛直レベルにおける比湿の値も補正しなければ ならない. 補正の前後で水蒸気の質量(絶対湿度)が変わっている わけではないからである. したがって, 水蒸気の質量が補正の前後で等しくなるように 比湿 を補正する. 補正の前後で水蒸気の質量が等しくなるという条件は 以下の式で表される.
(8.6) |
(8.7) |
(8.8) |