空間離散化された運動方程式(2.28), (2.29)と圧力方程式 (2.30)を時間方向に離散化する. 音波に関連する項は短いタイムステップ で離散化し, その他 の項は長いタイムステップ で離散化する. 音波に関連する項の離 散化には HE-VI 法を採用し, の式は前進差分, の式は後退差分 (クランク・ニコルソン法)で離散化する. その他の項の離散化にはリープフロッ グ法を用いる. 離散化した式の計算はまず の式から行う. 得られた の を用いて を計算し, を用いて を計算する.
運動方程式の各項のうち, 音波に関係しない項を として
まとめると, 運動方程式と圧力方程式は以下のように書ける.
(3.1)を時間方向に離散化すると以下のようになる.
HE-VI 法を用いるので, と の式を連立して解く. の式におい
て音波減衰項は前進差分, 圧力項は後退差分で離散化する. の式にお
いて水平微分項は(3.6)で求めた
を用いて離散化し, 鉛直微分項は後退差分で離散化する.
上下境界を固定壁とする場合, 境界条件は上部下部境界で,
(3.8) | |||
(3.9) |
下部境界:
下部境界()について考える. この時 (3.7) 式に
添字を付けて書き下すと,
上部境界:
上部境界()について考える. この時 (3.7) 式
を添字を付けて書き下すと,
(3.10), (3.14),
(3.16) 式を連立すると, 以下のような行列式の形式で書く
ことができる.
(3.14) |
運動方程式の音波に関連しない項 (3.1), (3.2) 式を
離散化する.
(3.17) | |||
(3.18) |
(3.19) |
(3.20) | |||
(3.21) |
(3.22) | |||
(3.23) |
(3.24) | |||
(3.25) |
熱の式と混合比の保存式の右辺をまとめて で表し,
時間方向にリープフロッグ法を用いて離散化する.
, , , をまとめて で表し,
それぞれの項を書き下す. 移流項は,
(3.35) |
(3.36) |
(3.37) |
(3.38) |
(3.39) |
凝縮加熱項 は
(3.40) |
散逸加熱項 は
(3.41) |
放射強制 は計算設定ごとに与える.
雲水から雨水への変換を表す , は以下のようになる.
(3.42) | |||
(3.43) |
(3.44) |
(3.45) | |||
(3.46) |
Klemp and Wilhelmson (1983), CReSS ユーザーマニュアル(坪木と榊原, 2001) では, 水蒸気と雲水の間の変換を表す は, Soong and Ogura (1973) において開発された 湿潤飽和調節法を用いる. この方法は の断熱線と, の 平衡条件( は化学ポテンシャル)の交わる温度・圧力・組成を 反復的に求める数値解法である. 以下ではそのやり方を解説する.
湿潤飽和調節法を用いる場合,
まず始めに (3.30) - (3.37)
式から求まる量に を添付し, ,
, , とする.
水に対する過飽和混合比
(3.47) |
もしも
の場合には,
硫化アンモニウムの生成反応
(3.54) |
硫化アンモニウムの生成反応の圧平衡定数は,
(3.55) |
任意の温度 における NHSH の生成量を とすると,
圧平衡定数の式は以下のように書ける.
(3.56) |
(3.58) |
(3.59) |
が (3.63) 式の条件を満たすならば,
次式を用いて暫定的に , , を求める.
(3.61) | |||
(3.62) | |||
(3.63) | |||
(3.64) |
Klemp and Wilhelmson (1978) および CReSS (坪木と榊原篤志, 2001) と同様
に, 1.5 次のクロージャーを用いる. 乱流エネルギーの時間発展方程式
をリープフロッグ法を用いて時間方向に離散化すると, 以下のようになる.
(3.65) |
(3.66) |
に含まれる各項は以下のように書き下すことができる.
(3.72) | |||
(3.73) |
(3.74) |
リープフロッグ法を用いたことによって生じる計算モードの増幅を抑制するた め, Asselin (1972) の時間フィルターを長い時間刻みで 1 ステップ計算する 毎に(実際には短い時間刻みの計算を ステップ計算する毎に)適用する.
たとえば(3.6)を用いて
を計算する場合, 以下のように時間フィルターを適用する.
ここで はフィルターの係数であり, その値は 0.05 を用い る. (3.7), (3.8)の計算に対しても同様 に時間フィルターを適用する.
境界面付近での波の反射を抑えるために, 基礎方程式の付加的な項を付け加える.
(3.76) |
(3.77) | |||
(3.78) | |||
(3.79) | |||
(3.80) |
はそれぞれ水平方向には各境界面に向かって, 鉛直
方向には上境界面に向かって小さくなる減衰係数である. これらの減衰係数は,
水平方向には吸収層の厚みを とし, の範囲を
とすれば,
(3.81) |
(3.82) |