地球流体電脳倶楽部
1996 年 11 月 13 日
火星大気の表面気圧はバイキング着陸船の圧力計により観測された. 火星大気の表面気圧は着陸船に搭載された圧力計によって観測する. これまで圧力を観測したのはバイキングの着陸船だけである. よって, 圧力が測られたのは, バイキングが着陸した2地点 (1号が着陸した( N, W )と 2号が着陸した( N, W ))だけであり, 全球的な観測はまだ無い.
図1は圧力の日変化を示したものである. この図に見られる気圧変動は1日周期と半日周期が卓越しており, その振幅は0.2mb 0.6mbである. この変動は熱潮汐波であると考えられている. というのは,この変動の周期と振幅が潮汐波の理論で 説明することができるからである. 図の中に計算からもともられた潮汐波の1日周期成分( )と 半日周期成分( )が描かれている. この2つの成分で気圧の日変動がうまく説明できると考えられている. (森山,1981)
図2はバイキングによる気圧の年変化の観測結果である. この図の横軸はバイキング1号が火星に着陸してからの時間を 火星日であらわしている. 図の上端には対応するLs(火星中心黄経)の値も示されている. というのは火星の軌道上の位置をあらわす1つの座標である. が北半球の春分に, が 北半球の秋分になるようにとる. 縦軸は日平均圧力をmbであらわしている. バイキング1号の観測値よりもバイキング2号の観測値の方が 常に5mb 6mb高いのは, 2つの地点で高低差があるからである. (1号の着陸地点の方が2号の着陸地点よりも高い.) 図2の特徴をまとめると, 以下のようになる. (Leovy,1979)
は南半球の冬至にあたる. 従って, 圧力の最小値が に存在するのは南の極冠に大気中の がcondenseし, 大気量が減少することに対応する. 同様に, は北半球の冬至にあたる. よって, 圧力の最小値が に存在するのは 北の極冠に大気中の がcondenseし, 大気量が減少することに対応する. 南半球の冬の方が北半球の冬よりも大気量は少なくなっている. これは南半球の極冠には北半球の極冠よりも多くの がcondenseするためであると考えられている. また, 圧力が最小の時( )と 最大の時( )とでは, 約2.5mb(極大時の25%)の差がある.
これはダストストームによる効果と考えられている.
これもダストストームによる効果と考えられている.
図2 地表面気圧の年変化 (Hess et al., 1980; Carr, 1996, 図1-2). (上下に付値されている図)は標準偏差である. ダストストーム時の標準偏差の 増大は日変化の振幅の増大に対応している.
謝辞
本稿は 1989 年から 1993 年に東京大学地球惑星物理学科で行われていた, 流体理論セミナー, 及び 1996 年に行われていた 固体火星セミナーでのセミナーノートがもとになっている. 原作版は石渡正樹による「火星現象論」 (1989/05/19) であり, 林祥介によって地球流体電脳倶楽部版「火星現象論」 として書き直された (1996/06/23). その後小高正嗣によって加筆修正された (1996/11/13). 構成とデバッグに協力してくれたセミナー参加者のすべてにも 感謝しなければならない.
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